『「戦艦大和」と戦後』

吉田満 著 保阪正康
ちくま学芸文庫
ISBN4-480-08927-6
戦艦大和ノ最期」と、著者が太平洋戦争に従軍したことに関して書かれたエッセイを集めた本。
極言すれば、というか事実上、「戦艦大和ノ最期」と、その膨大な後書き、と考えれば、分かりやすい本だろうか。一応は、吉田満選集みたいな形をとっているが、吉田満がそれ以外のことを余り書かなかったのかどうか、私は知らない。
膨大な後書き、ということで、ぶっちゃけていえば、本編よりも後書きの方が長い本はいかがなものか、というのが正直な感想の本ではある。
戦艦大和ノ最期」そのものは、文語体なので若干分かり難い箇所もあるものの、カナ交じりというのは、それ程苦にはならなかったし、一読以上の価値がある、とは思うが。また、「戦艦大和ノ最期」だけでは、戦争肯定の文学という批判も大きく的外れではないと私も思ったが、「後書き」を読めば、少なくとも著者の主観的には、そうではない、ということがよく分かるので、すべてが無駄ということでもない。
しかしそれにしても、さすがに後書き長すぎか。500ページを越えるのに、テーマが殆どそれだけ、というのは、辛いものはある。
良くいえば、「戦艦大和ノ最期」を目当てに買ってみる手もあるとは思うので、「戦艦大和ノ最期」だけに期待して買っても良い、という人ならば、というところだろうか。
ちなみに、大和から投げ出されて波間に漂っている時に聴こえた音楽がバッハの無伴奏ソナタだったというのは、シャコンヌのことをいっているのだろうか。