『がんというミステリー』

宮田親平 著
文春新書
ISBN4-16-660447-3
ガン研究史についての連作コラム。
一応、一通りまとまってはいるが、元々は月刊誌の連載ということで、全体が20もの断章から成っており、その分、個々の内容は浅いような気がする本。記述的にも、誰々が何々を発見してノーベル賞をもらった(あるいはもらわなかった)、という話がメインで、後一歩深みがない感じ。
概略としてそれなりといえばそれなりだし、良くいえば、内容が浅い分、スピード感がある、かもしれないので、私には余りぴんとこなかったが、雑学本で良い人には、こんなものである、という可能性もなくはなく、そうしたもので良ければ読んでみても、という本か。
しかし最後の章の疫学の話とかは、これでは疫学について何も分からないと思うので、本当に何も知らない初心者が読むような本であるかどうかは、よく分からない。
個人的には特に読んでみる程のものではなかったと思うので、いずれにしても薦める程ではない。
以下、メモ。
・手術用手袋は、ウィリアム・S・ハルステッドが、後に彼の妻となる看護師長が消毒による手荒れに悩まされていたのでゴム手袋をプレゼントしたことから始まった。
・最初の抗癌剤は、毒ガス(イペリット)から生まれた。
・免疫血清中には特異性の異なる細胞群から産生された抗体が多数混じっているが、モノクローナル抗体とは、一個の細胞を分裂・増殖させた細胞群(モノクローン)が産生する抗体のことである。