『日中はなぜわかり合えないのか』

莫邦富
平凡社新書
ISBN4-582-85270-X
日中関係に関して書かれたエッセイ。
特にこれといったテーマはないし深くもない、雑多な読み物的エッセイ。良くいえば、ある一面を見れば本書のように見えることは、多分そうなのだろうから、雑多な読み物で良ければ、読んでみても、という本か。
あんまり特別でも無理に薦める程のものでもないとは思うが、それなりといえば、それなり。いろいろな見方を知ることに意義がない訳ではない。
ただし、レトリックに関しては、おかしな点もいくつかある。例えば、90年代以降の愛国教育が今日の反日感情の高まりの元凶だ、という説を否定するのに、年齢は知らないが大学教授に、自身が受けた教育を根拠にたいしたことではない、と言わせてみせても、説得力は全くない、とか。中国については知らないが私が多少知っている範囲でいえば、インターネットに関する記述も、64bps というのが単純ミスではない、と疑われるくらいには変だと思うし、好意的に解釈して、せいぜい、希望的観測に基づいた一面的な見方、というところか。というか、ビデオオンデマンドの話とかを持ち出して、インターネットはこのように素晴らしい、この素晴らしいインターネットで中国は変わったのだ、などといわれてもねえ、という感じ。
私としては、他の中国に関する記述がこのレベルではないことを願うばかりである。
以下、メモ。
・経済発展を続け、超大国になれる可能性も出てきた中国から独立しよう、などと考える地方の指導者は、台湾を除いては、まずいないだろう。
・日本企業は、中国を生産現場とのみ考え、中国の消費者に対して尊大に接し過ぎてきた。その結果、日本企業、日本製品に対する信頼が低下し、日本のイメージも悪くなった。