『日露戦争史 20世紀最初の大国間戦争』

横手慎二 著
中公新書
ISBN4-12-101792-7
日露戦争に関する概説的な通史本。
全体の半分である 100ページを過ぎた辺りで開戦なので、戦争開始に至る過程を詳しく描いた、というのが一応は特徴になるだろうが、選択にあたっては、特記しておくようなことは余りない普通の通史、と考えておいて間違いはないだろう。
新書サイズでコンパクトにまとまった通史が欲しいのなら、割と良い本だと思う。通史で良ければ、読んでみても良いのではないだろうか。
個人的に、ロシアの国内意見が必ずしも一致せず、妥協的で安易な強硬論でごまかしていたらしっぺ返しを喰らった、というのが、その後の日本みたいで面白かった。
ただし、戦争そのものの経緯はそれ程詳しく描かれていないので、その方面を求めるのには向かない。コンパクトな通史で良ければ、というところ。
メモ1点。
・伊藤が持って行った満韓交換論に、ウィッテは好意的だった。
シベリア鉄道に続いて東清鉄道と旅順軍港の建設を進めるロシアには、現実には、更に朝鮮半島に進出する財政的余裕はなかった。ただし、シベリア鉄道の推進者として前皇帝アレクサンドル三世に登用されたウィッテは、現皇帝のニコライ二世からは寧ろ疎まれていた)