『ルソン戦線 最後の生還兵 マニラ陸軍航空廠兵士の比島山岳戦記』

高橋秀治 著
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-2898-3
第二次世界大戦ルソン島で米軍に追われ山岳に逃げ込んでから復員までのことを書いた戦記。
やや分かりにくい面もあるが、特徴もあるので、この手のものが好きで興味があるなら読んでみてもよい本か。
特徴というのは、一つは、山岳地帯には在留邦人も一緒に逃げ込んできていて軍の助けも得られず女性や子どもが苦しみながらさまよっていたことが何度も描かれていること。
もう一つは、PWとして米軍からの待遇があまりよくなかったと書かれていること。
これらは先行本にはあまりない特徴で、ひょっとしたら先行本を読んでの著者なりの違和感の表明であるのかもしれない。
ただ、米軍の対応がよくなかったのは著者が戦犯容疑者であったことが大きいと思われるものの、そのことはあまりはっきりと分かりやすい形では書かれていない。
戦犯容疑者であったことには書きにくい部分もあったのかもしれないが、冒頭部分の時系列をずらしているなど本書には分かりにくい面があり、多分その一環なのだろうと思う。
この手の戦記をまったく読んだことがない人はちょっと戸惑うかもしれない。
そうした面も含めて、この手の戦記を何冊か読んだことのある人向けだが、それでよければそれなりには面白い本か。
そうしたものでよければ読んでみても、という本だろう。