『新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで』

審良静男・黒崎知博 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-257896-7
免疫システムについて書かれた本。
免疫について、割とまとまっていて、面白い。ただし、複雑なことが書かれているので若干難しい面はあると思う。
それでよければ、結構いい本。
悪くはない本だと思う。
読んでみてもいい本だろう。

以下メモ。
・体に侵入した異物はマクロファージなどの食細胞が取り込んで消化する(自然免疫)。
食細胞はサイトカインを放出して他の免疫細胞に働きかけるが、食細胞にはTLR(トル様受容体)などがあって、異物が細菌やウイルスでないか判別できるようになっている。
獲得免疫の引き金は自然免疫が引く。
・食細胞の一種である樹状細胞は、病原体を食べると活性化してリンパ節に移動し、細胞の表面にあるMHCクラスII分子に病原体を分解したペプチドを載せて提示する。
リンパ節にいるまだ抗原に出会ったことのないナイーブヘルパーT細胞が樹状細胞に提示されたMHCクラスII分子と病原体由来のペプチドにくっつくと、病原体に適合したそのヘルパーT細胞が活性化される。
活性化したヘルパーT細胞は増殖して末梢組織に出て行き、サイトカインを放出して食細胞を活性化させる。
同じ病原体を食べたマクロファージは、活性化してやはり表面のMHCクラスII分子に病原体由来の抗原ペプチドを提示しているが、ここに活性化したヘルパーT細胞がつくことでさらに強力となる。
・体に侵入した病原体の一部はリンパ節に流れ着く。まだ抗原に出会っていないナイーブB細胞は、表面にあるB細胞抗原認識受容体にくっついた抗原を食べ、分解したペプチドをやはりMHCクラスII分子に載せて提示する。
同時期に、樹状細胞に活性化されたヘルパーT細胞があると、B細胞の表面の抗原ペプチドにくっついて、B細胞を完全に活性化させる。
活性化したB細胞は、抗体を産出することになるが、抗体のタイプを替え(クラススイッチ)、増殖するたびに抗原結合部位を少しずつ変異させることで(親和性成熟)、より強力な抗体を産出するようになる。
抗体は、B細胞抗原認識受容体と同じ形を持っていて抗原にくっつくが、それによって抗原の毒素を中和したり、また食細胞と結合する部位も持っていて、食細胞が抗原を処理することを促す。
抗原がタンパク質でない場合、ヘルパーT細胞がつかないのでクラススイッチも親和性成熟も起こらないが、多くのB細胞抗原認識受容体にくっついて刺激されることで、B細胞がなんとか活性化し、抗体を産出する。
・すべての細胞は細胞内にあるペプチドをMHCクラスI分子に載せて提示している。
細胞がウイルスなどに感染した場合、ここにウイルス由来のペプチドが提示されることになる。
通常自分が作ったタンパク質のペプチドのみが提示されるMHCクラスI分子に、樹状細胞は食べた病原体由来のペプチドを載せることができる。
MHCクラスI分子に抗原ペプチドを載せた樹状細胞は、それに適合したナイーブキラーT細胞を活性化させる。
活性化したキラーT細胞は、サイトカインによって感染部位にたどり着き、MHCクラスI分子に抗原由来のペプチドを載せている細胞にアポトーシスを起こさせる。
細胞表面にMHCクラスI分子がなく、感染ストレスによってNKG2Dリガンドなどが出ている細胞は、ナチュラルキラー細胞が同様にアポトーシスを誘導して始末する。
・T細胞が成熟する胸腺(Thymus)の上皮細胞にはMHCクラスI分子とMHCクラスII分子に自己ペプチドが載ったものが提示されていて、遺伝子再構成を起こして多様なT細胞抗原認識受容体を持つようになったT細胞はここにくっつく。
自己ペプチドに強く結合したT細胞はアポトーシスを起こして死ぬ。
ペプチドにまったく結合しないT細胞も、役に立たないと判断されて取り除かれる。
MHCクラスI分子とゆるく結合したT細胞はキラーT細胞になり、MHCクラスII分子とゆるく結合したT細胞はヘルパーT細胞になる。
胸腺に移動せず骨髄(Bone marrow)で成熟するB細胞は、周囲にあるあらゆるものを自己抗原と考え、強く結合するもののみが取り除かれる。
・活性化していないときの樹状細胞には自己ペプチドのみが提示されているが、これに強くくっついてしまうT細胞も、排除されるか一部は制御性T細胞になる。
・食べ物由来のペプチドが体内に入った場合も、細菌やウイルスではないため樹状細胞が活性化しておらず、食物由来のペプチドに結合するT細胞が制御性T細胞になると考えられる。
食べ物に含まれるタンパク質も一部は完全に分解されないまま体内に入るが、急激な免疫反応は起こらない。
漆職人はかぶれを防ぐために漆を少量食べたりする。