『ヘッジファンドの真実』

若林秀樹 著
洋泉社・新書y
ISBN978-4-86248-216-7
ヘッジファンドファンドマネージャーヘッジファンド等について書いた本。
前半はヘッジファンドに関する概説、後半は、ヘッジファンドに関することの他、著者の前職であった証券アナリストのことなど、やや雑多なことが書かれたもので、その分、著者によるエッセイ、みたいな捉え方の方が有効かもしれない本か。
ロング、ショートから、デリバティブレバレッジアービトラージ、クォンツくらいまでは、ほぼ日常語扱いなので、全くの初心者がヘッジファンドのことを知ろうと思って手を出すのは危ないと思う。
金融のことを多少は知っているけども、ヘッジファンドのことはよく知らない、という人向けか。
後は、特別ではないが、そう悪いこともない本。ヘッジファンドのことが一応まとめてあるし、ヘッジファンドファンドマネージャーが書いた、というだけでも、それなりの価値はあるだろうから、読んでみても良い本だとは思う。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
ヘッジファンドの評価にはリターンを標準偏差で割ったシャープレシオが使われることも多い。
・ソロスが使い、かつて主流だった為替取引を利用するグローバル・マクロというヘッジファンドの運用戦略は、現在では少数である。
・実際に運用している金額と運用原資の比率をグロス・エクスポージャという。この数字が高いことはリスクをとっていることを示しているので、相場が不透明な時には各ヘッジファンドグロスを落とし、一種の信用収縮が起こる。
・売りと買いの差を運用金額(原資?)で割った比を、ネット・ロング・エクスポージャという。
相場が上昇局面にあると予想すれば、ネット・ロングを大きくして、ベータ(相場上昇に乗っかった利益)を取りに行く(ベータを取りに行かずに、相場変動のリスクを避ける運用戦略もある)。
グロス・エクスポージャやネット・ロング・エクスポージャを機動的に用いて、それに合ったポートフォリオ組成を行うことが、ヘッジファンドの特徴の一つである。
ヘッジファンドの成功報酬は、通常、直前のピークよりもリターンが落ちている場合は請求されない(ハイウォータマークルール)。
・証券会社から見て、ヘッジファンドは、規模は小さくてもレベレッジを利かせ、回転率が良く、少数精鋭のため証券会社の情報に期待する面も大きいので、上顧客である。
ヘッジファンドは、ファンドマネージャーが管理できる規模や、時価総額流動性等との兼合いから、好パフォーマンスを出せる運用金額が限られており、運用会社や運用助言会社はそれに見合った中小企業である。そのため、ヘッジファンドの資金を広く公募することは難しい。