『旅順と南京 日中五十年戦争の起源』

一ノ瀬俊也 著
文春新書
ISBN978-4-16-660605-4
日清戦争における、ある兵士と軍夫の従軍記を紹介した本。
タイトルにもなっているように、日清戦争と後の日中戦争との類似点を見よう、というモチーフのある本ではあるが、基本的な構成としては、同じ師団に属した二人の日記を元に、日清戦争におけるある兵団の軌跡等を描いた戦記物、考えておけば良い本。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
私は日清戦争の戦記物は読んだことがなかったので、興味深く読むことができた。日清戦争では補給部隊に兵士ではなく金で雇った軍夫を充てていた、というのも知らなかったので、日本軍における輜重蔑視の根がこんなところにあったのか、とか。
現代文への要約・解説と、日記本文の引用、という二重の構成になっているので、ややくどい印象もあるが、それ以外はありがちな戦記、というところだろう。
興味があるのなら、読んでみても良い本だと思う。
以下メモ。
日清戦争で日本の第二軍が旅順を占領した際に引き起こした虐殺事件に対しては、士気の低下を理由に第二軍司令官大山巌以下の処分は行われなかった。
日清戦争において中国東北部の厳冬を経験したことが、日露戦争前の八甲田山での演習に繋がったのだろう。