『非線形科学』

蔵本由紀
集英社新書
ISBN978-4-08-720408-7
複雑系に関する科学読み物。
細かくいうなら、非線形現象についての数理モデルに関して書かれたものだが、大体のところ、複雑系についてのありがちな本、と考えておけば間違いないだろう。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
私は複雑系の本で余り当たりを引いた試しはなく、本書もその例外ではなかったのだが、別にありがちといえばありがちな複雑系の本だと思うので、これで面白い人には面白いのだろう。
本書を読んで一つ思ったのは、複雑系というのは、ありふれたあたりまえの日常現象を数理モデルで表現できるところが面白いのではないだろうか。一般向けの解説書だと数理モデルを表現するのにはどうしても限界がある訳で、そこのところが分からないと、私のように、テーマが、あたりまえのことはあたりまえのことだ、というものであると思えてしまうのではないだろうか。
だとするなら、数学抜きの説明で複雑系の背景にある数理モデルに想いをはせられる人には、複雑系の本は面白いのかもしれない。
複雑系の本としては、標準以上ではあっても、標準以下ということはないと思うので、複雑系の本が楽しめる人なら、本書も楽しめるのではないだろうか。
興味があるならば読んでみても、という本だろう。