『未完の明治維新』

坂野潤治
ちくま新書
ISBN978-4-480-06353-3
幕末から明治前半にかけての新政権の路線対立を素描した本。
維新史全般ではなく、志士たちの路線対立に的を絞った本で、良くいえば、著者の主張が分かりやすくはあり、悪くいえば、明治維新史全体の流れを知らない人には少し厳しいかもしれない、という本か。
そうしたもので良ければ、読んでみても、というもの。
特別でもないが、悪くもなく。他には特に述べておくようなことはなく、これはこれで、こうした本だ、というべき本なのだろう。
興味があるのなら、読んでみても良い本だと私は考える。
以下メモ。
・諸藩主等を集めた会議を開いて、国論を統一し、その力で、外国に対して対等な関係を築いて開国しようというのが、討幕前の公武合体・開国派の志士たちの共通路線だった。討幕によってこの路線そのものに進むことはなかったが、五ヶ条の御誓文に「広ク会議ヲ興シ」とあったり、後の板垣自由党の活動もその延長線上にあった。
西郷隆盛がもし川村純義や樺山資紀の立場だったらと考えると、西郷挙兵となれば義に篤い西郷なら当然西郷に味方するだろうから、西郷の挙兵は、主観的には勝算がなかった訳ではない。
・明治前半期の志士たちの路線対立には、敵ではなく共に維新を成し遂げた同志としての甘えが見受けられる。