『数のエッセイ』

一松信 著
ちくま学芸文庫
ISBN978-4-480-09041-6
数学エッセイ。
主に40年近く前の科学雑誌の連載を中心に、数学に関連したエッセイを集めた本(の文庫落ち)。
エッセイそのものは特にどうということはない普通のエッセイなので、これで面白い人には面白いのだろう、という本か。
40年近く前の科学雑誌の掲載エッセイ、という訳で、さすがに古めかしい部分はあること、一般向けというよりは(その手の雑誌を読むような)好事家向けであること、から、広くお薦めできるような本ではない。
別に薦めるようなものではないが、それでも良ければ、というところだろう。
メモ1点。
・√2が無理数であることの別証明。
√2が有理数であると仮定すると、ある整数m、nに対して、√2=m/nが成り立つ。
両辺を2乗して、2=m^2/n^2、2*n^2=m^2、となる。
正の整数を素因数分解すると、順番を問わなければすべて一意に分解できるが、平方数の素因数の数は、元の数の素因数の数×2となるので、すべて偶数個であり、m^2の素因数の数は偶数個、2*n^2の素因数の数は奇数個となって、2*n^2=m^2となるような整数m、nの組み合わせが存在するならば、素因数分解の一意性に反することになる。
よって、最初の仮定は間違いであり、√2は無理数である。
(ちなみに、この議論は、2だけではなくて、すべての素数について当てはまるだろう。つまり、すべての素数pについて、√pは無理数であり、p*n^2=m^2となるような整数m、nの組み合わせは存在しない)