『決定版 失敗学の法則』

畑村洋太郎
文春文庫
ISBN4-16-770001-8
失敗はどのようにして起きるのか、大きな失敗を避け、小さな失敗を成功に結び付けるにはどうすれば良いか、というようなことについて書かれた概説書的な本。
全体として、あくまで概説書であり、決定版、と銘打たれているように、概説としてはかなりよくまとまってはいるが、その分、筋骨ばかりで肉はない、という本。
概説で良ければ良い本だと思うので、概説で良いという人や、ビジネス等に活かしたい人、必要があって読む人には、結構良い本ではないだろうか。
しかし、個人的な好みをいえば、もう少し具体例等が豊富に書かれている本の方が、私は好きではある。ちなみに、私が本書で一番面白かったのは、文庫化に際して付けられた附章で、回転ドアで発生した事故の分析がなされているところ。
(ドアのようなものは、本質的にその運動エネルギーが小さくないと危ない。元々の回転ドアを開発したヨーロッパの会社では、この危険を認識して、回転体の質量を小さくしていたが、この会社が日本から撤退し、技術だけが日本に移入された結果、この危険が意識されなくなり、見栄えのため等にどんどん質量が大きくなっていって、事故に結び付いた、というところらしい)
こういう本が良いという人にはよくまとまってはいるが、私のように、単に楽しい本が読みたい、という人には、もう少し別の本があるような気もする。
それでも悪い訳ではないので、概説で良ければ、という本だろう。
以下、メモ。
・失敗の原因には、失敗の元となった要因と、その要因を失敗に結び付けた組織特性等のからくりとがある。
・新規事業は隣接分野でないと成功しない。