『戦後政治家暴言録』

保阪正康
中公新書ラクレ
ISBN4-12-150173-X
戦後における政治家の暴言や失言をいくつか集めた本。
暴言を集めたただの雑学本といえば、雑学本だが、今の時代は右傾化や政治的無関心によって暴言が出やすくなっている、ということが、テーマとして書かれたもの。
このテーマというのが、しかし曲者ではあって、暴言を事細かに網羅するのならともかく、新書レベルで多少集めた程度では、結局のところは印象批判にならざるを得ず、テーマが持つ説得力は、かなり弱い。このテーマがいいたかったのならば、戦後の暴言を集めるというのではない、もう少し違ったレトリックを与えるべきだったろうし、戦後の暴言を集めるのなら、もう少し違ったテーマなりモチーフなりを考える必要があったと思う。
その点で、失敗作と見るべき本だろう。
雑学本と割り切れるなら読んでみる手はあるかもしれないが、特に薦めはしない。
メモ1点。
吉田茂、池田隼人、佐藤栄作のような戦前官僚の出身である政治家の暴言からは、自分は天皇の臣下として国民を指導すべきエリートであるとの意識を持っていることが透けて見える。