『裏支配 いま明かされる田中角栄の真実』

田中良紹
講談社+α文庫
ISBN4-06-256919-1
田中派番記者であった著者の体験を基に、80年代の政治の流れを追った本。
大体のところは、中曽根内閣と竹下内閣の時代の日本政治の流れを田中派の動向を軸に追ったありがちな政治読み物、と考えて大きな間違いはないが、取材メモを再構成した、といった感じの形式から、単純に政治史を追ったというよりも、その場に居合わせた著者の目を通してそれを語ったもの、という印象が強い。
それはそれで臨場感はあって、著者の理解をたどることも易いだろうが、著者が前面に出過ぎという面もあり、手前味噌臭さはある。
後は、そう特別でもないがまずまず普通の政治読み物。私はこの手の政治読み物が好きなので結構楽しめたし、こういうのが好きな人なら、読んでみても良いと思う。
著者は、田中角栄から、日本に野党はない、と言われて、与野党馴れ合いの55年体制に疑問を持っていたそうだが、今更そういわれても、という感じではあるが(本書は文庫再録だが、原著の出版も2003年だ)。
ちなみに、余り関係はないが、著者が裏支配としているものが具体的にどういうことを指していっているのかは、必ずしも明らかではない。
以下、メモ。
田中角栄は、(多数決で決める)民主政治に偶数はない、といって、二人区や四人区に反対した。
・政権が最も恐れるのはインフレだ、と田中角栄は言った。