『新装版 九九双軽空戦記 ある軽爆戦隊長の手記』

土井勤 著
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-3025-2
太平洋戦争で軽爆撃機隊の戦隊長を務めた著者による戦記。
ポイントは、爆撃機隊というよりは、部下から特攻隊員を送り出した戦隊長というところにあり、特攻隊に志願されられた側の話はあっても志願させた側の手記というのは珍しいので、それなりの戦記ではあると評価できるだろう。興味があるならば、読んでみてもいい本。
実際には、プロレスじゃあるまいし本書に書かれているほどは、部下思いの著者がベビーフェイスで富永中将がヒール、という簡単なものではなかっただろうが。
出撃のたびに未帰還機が出て誰かが戦死していくような状況では特攻隊を命ずることへの心理的抵抗は少なかった、というのは、著者も富永中将も似たようなものだっただろうし。
戦記としては、簡潔な分、詳細ではなく、それなりの戦記ではあっても特別とまではいえないと思う。
後は、特攻隊を送り出した側の手記にどれだけの価値を見出すか、というところ。
そうしたものでよければ、読んでみてもよい本だろう。