『競争と公平感 市場経済の本当のメリット』

大竹文雄
中公新書
ISBN978-4-12-102045-1
経済学者が書いたコラム。
経済学の研究成果がいろいろと書かれていて面白い部分もあるが、全体的に、テーマもまとまりもない漫然としたコラム、のように個人的には感じた。
雑誌等に書いたコラムを集めたものではなく、書き下ろしみたいではあるのだが、話があちこちに飛んで全体の流れがないので、コラム集みたいな感じになっている。コラム集ではない分、個々のコラムが完結していないので、すっきりしないのかもしれない。
後は、経済学者が書いたコラムで良ければ、というところだが、似たようなものは他にいくらでもあるだろうし、特にというほどのものはないと思う。
それでも良ければ読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・高校や大学を出てすぐのころに不況を経験すると、その世代の人は歳を取っても人生の成功は努力よりも運によると考えるようになる。
アメリカでは、所得が学歴や才能で決まるべき、と考える人が多い。
・有給休暇を取得する時期を労働者が自由に決められると、労働者は不測の事態に備えて有給を残しておくために、取得率が低くなる。
・イギリスにおける研究によると、イギリスでは看護婦の賃金が全国一律に決められているために、相対的により高い賃金の仕事がある地域では、(おそらく看護婦の質が低下して)患者の死亡率が高くなっている。
外国人労働者を受け入れて単純労働者の賃金が下がっても、低賃金で労働を増やせば生産量が増えるので資本所得が増加し、その効果が上回って国全体で見れば所得が増える。