『マックス・ヴェーバーの哀しみ 一生を母親に貪り喰われた男』

羽入辰郎
PHP新書
ISBN978-4-569-65999-2
マックス・ウェーバーに対する精神分析的な記述。
いや、必ずしも精神分析ではないのかもしれないが、大体そういった類の、ウェーバーの精神構造のあり様を忖度した本、と考えておけば間違いない。
私は、精神分析とかは大好きだから、割と面白く読めたので、興味があるならば読んでみても良い本だと思う。
こういうのが好きな人なら、悪くはない本。
どこまで行っても解釈には過ぎないから、ある種のいかがわしさのようなものから自由ではないが。
例えば、本書に書かれているようなウェーバーと母親との関係は、著者とその母親との関係の投影に過ぎないのではないか、という印象は強く受けた。私は著者も著者の母親も知らないので、本当のところは分からないし、投影であったとしても、必ずしも、だから間違っている、とはいえないが。しかし、ウェーバーがどういう人だったかは論じられていても、その母が本当にサブタイトルのような人物だったのか、直接には全く検証されていないのは、史料の制約があるのだろうとはいっても、構成が弱いのではないだろうか。ウェーバーが妻と性生活を営むことができなかった理由を、母親からの禁止に求めているのは、一見自然なようにも見えるが、では何故浮気相手とならセックスできたのかということの説明は、余り巧く行っていないように思える。
このように多少批判できる点もあるが、解釈はいくつも成り立つのだろうから、その中の一つ、ということで良ければ、悪くはない本だと思う。
興味があれば、読んでみても良い本だろう。