『暗殺国家ロシア リトヴィネンコ毒殺とプーチンの野望』

寺谷ひろみ 著
学研新書
ISBN978-4-05-403458-7
リトヴィネンコ毒殺事件に関して、その背景等を解説した本。
リトヴィネンコと親しかったり、あるいは敵対したりした人物の人脈図を描きながら、ロシア現代史における権力争いを素描したもので、毒殺事件そのものについては、独自の情報等がある訳でもないので、陰謀論の範疇を越えるものでは余りないが、事件の背景を解説したものとしては一通りのまとめではあろうから、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
一応の流れとしては、ソ連邦崩壊後のロシアでは組織犯罪者がはばをきかせ、そうした中から、オリガルヒと呼ばれる新興の実業家達が財を成してきたが、プーチン政権による中央集権化政策の元で、国家権力と結び付いた実業家が、オリガルヒに替わって台頭し、シロヴァルヒと呼ばれるようになっている、というところ。リトヴィネンコはオリガルヒの側に立ってプーチン批判もしていたらしい。
ポロニウムの説明にたどたどしいところがあるとか、ヨハネ・パウロがジョン・ポールと英語形になっているとか、妙な部分もあるが、元々陰謀論に近い話でもあるから多少は眉に唾をつけなければならない訳で、こんなものといえばこんなものだろう。
一通りの簡略なまとめなので、私のようにロシアの現状を全く追っていないと、ついていくのがやっとという感もややあるし、ロシアの現状を多少追っている人には、目新しいものは余りないかもしれないが。
全体的に、特に、という程でもないが、事件の背景を解説した本で良ければ、それなりのまとめではあると思う。
興味があるならば、読んでみても、という本だろう。