『「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡』

犬塚則久 著
講談社ブルーバックス
ISBN4-06-257537-X
退化器官や痕跡器官等の、人体にある進化の痕跡について書かれた本。
だだだーっと詰め込まれた概説的構成や、細かな解剖学的事項の記述が多いことから、余り読みやすい本ではないと思うが、内容的には、それなりに面白い本か。
興味のある人や、解剖学的な記述が大丈夫だという人ならば、楽しめるのではないかと思う。
もう少し読みやすくできないかという気はするが、テーマがある訳でもない雑学読み物なので概説的になるのは仕方がないだろうし、解剖学的な細かい記述が多いのも内容的に当然ではあるだろうから、こんなものでしょうがないといえばしょうがないか。
雑学読み物としては余り読みやすくはないが、それなりに面白いので、興味があれば、悪くはない本だと私は思う。
興味があるのなら、読んでみても良い本だろう。
以下メモ。
・耳の穴は元々エラ穴であり、それ故に喉と耳は繋がっている。エラ穴を支える骨が変化して顎ができたと考えられるが、歯の生える歯骨だけがどんどん大きくなることで、最初に顎を構成した骨は後ろに追いやられ、人間(哺乳類)では音声を伝える耳小骨になった。
・心臓は、進化の過程で肺循環が加わることによって形を大きく変えており、奇形の多い臓器である。
・消化効率を高める咀嚼は哺乳類に恒温性の基盤を提供するものであり、常に咀嚼を行うために、哺乳類の歯は一度か二度しか生えなくなった、と考えられている。
・卵を生む動物は便も尿も卵も一つの総排泄腔から出すので、卵を生む原始的な哺乳類を単孔類という。
・赤ちゃんの頭の骨は、産まれてくる段階では完成しておらず、穴が開いている。骨化は産まれた後も続き、最終的に閉じ終わるのは80歳過ぎとされる。
・ヒトの虫垂はリンパ小節が集まった免疫組織として機能している。
・副乳や親知らず等、退化器官は個体変異が多い。
・性腺は中腎という原基から分化するが、男では髄質が拡大して精巣になり、女では皮質が拡大して卵巣になる。