『犯罪は「この場所」で起こる』

小宮信夫
光文社新書
ISBN4-334-03319-9
犯罪社会学の入門的読み物。
主な内容としては、犯罪は、入りやすく、見られ難い場所で行われることが多いので、そのような場所を減らして犯罪の機会を少なくすることが重要だ、という話と、そうした考えに基づいて米英でどのような犯罪対策が行われているかを紹介したもの。
光文社新書らしい入門書だといえばそういう本なので、そうしたもので良ければ読んでみても、という本ではあるのかもしれないが、ただし、結構欠点が大きいので、お薦めにするには足りない。
欠点というのは、全体に殆ど無批判の礼賛であること。バラ色のことばかりが書かれていて、立ち止まって深く考えてみようという契機がない。本書の半分くらいは米英の事例の紹介だが、日本とは司法制度やボランティアの考え方が大きく異なるし、社会が違うのだから、それがそのまま日本に当てはまるということはないだろう。後、最後のところに出てくるデジタルとアナログのアナロジーは、殆どどうしようもない。
入門書だからと割り切る手もあるかもしれないが、このような欠点が大きいので、本書は、私には余り良い本だとは思えなかった。
メモ1点。
・きちんと整理整頓された机は、物がなくなればすぐに分かるので、犯罪者の標的になりにくい。