『「大岡裁き」の法意識 西洋法と日本人』

青木人志
光文社新書
ISBN4-334-03300-8
日本における西洋近代法の受容に関していくつかのことが書かれた本。
前半は明治以降の受容の歴史、後半は、受容を巡る若干の問題(極言すれば、日本人は裁判を嫌う、とされてきたが、そもそもそのような事実はない、ということだろうか)が書かれたもので、全体的に、いくつかの話を合冊にしたような感じの本。
あるいは、総論概説といえば総論概説であるのかもしれないが、ごつごつとしていて、唐突で、全体としての流れや滑らかさはない。川の上流で大きな岩がごろごろと転がっている風景、といえば、そんな感じの本だろうか。
個々の話はそれなりに面白かったので、惜しい本ではあるが、ただ無理矢理一冊にしたというだけで、一冊の本として、成功しているとはいえないと思う。読んでみる手はあると思うが、薦められる本ではない。
メモ1点。
・日本に近代法が整備される前の明治前半には、英吉利法律学校(後の中央大学)の名前にも見えるようにフランス法と並んでイギリス法の影響も強かったが、判例の集積であるイギリス法は短期間に日本に継受するには適さなかった。