ペンローズの量子脳理論的な

『知ってるつもり 無知の科学』
ティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバーグ 著/土方奈美 訳
ハヤカワ文庫NF
ISBN978-4-15-050578-3
ヒトの知性のありようについて書かれた本。
なんというか、専門家が余技で書いたようなというか、ペンローズの量子脳理論とか森嶋通夫非武装中立論とか、そういった類のものか。そういうので良ければ、という本。
全体として、エビデンスは少なめで想像の翼を大きく広げた感じ。
トンデモな印象は受けなかったし、著者らの言うことは正しいかもしれないが、結構な綱渡りはしているだろうし、どこかで跳んではいけない飛躍をしてしまっている可能性は小さくないと思う。
こういうのは、面白いといえば面白いけど、改めて、じゃあどうなの、と聞かれて正面切ってはどうもね、というもの。
それでも良ければ、という本だろう。

以下メモ
・野球でフライを追うときには、ボールと地面との角度が常に最大になる方向に動いていけば、落下地点に到達できる。
(最終的に、ボールは真上から落ちてくる)
ヒトの知性とはこういう処理をしているのだと思われる。
ボールの初速と打ち出し角度から落下地点を計算しているのではない。
・そのような判断を下すための知識は、必ずしも自分の中になくてもよい。
ヒトは、自分が持っている知識とコミュニティの誰かが持っている知識とをシームレスに使えるように思われる。
・ヒトは、他人が何に興味を持っているかに関心を持つ。
赤ちゃんの前で何かを見つめれば、赤ん坊は大人が見つめているものを注視する。
このような志向性をAIにプログラムすることはまだできていない。
自動運転車は安全で快適に素早く目的地に到達したいというヒトの志向を共有することができない。
・大きな発見をした人は偉大な人物だとみなされるが、実際には知識のコミュニティにラストストローを載せている。