難しい割りにたいしたことは書かれていない

『ゲノム編集とはなにか 「DNAのハサミ」クリスパーで生命科学はどう変わるのか』
山本卓 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-519469-0
クリスパー・キャス9に関してあれこれと書かれた本。
基本的にはやや難しめで、おまけにはまだはっきりとした成果があるわけでもないが、それで良ければ、という本か。
説明はややもったりしているし、基本的にはセントラルドグマについて一応の知識はあり、プロモーターとかエンハンサーとか言われて動じないでテンションが上がる人向け。
つまり私向きということではあり、簡単なことしか書かれてなければそれはそれで文句をいうくせに不平を述べるな、ということではあるよな。
しかし、本格的な成果はまだまだこれからではあり、今これを読む理由がどこまであるかという疑問はある。
これから成果が出てきたときからでは遅いかもしれないが。
だとしても、もっと優しい部分から出発して、クリスパー・キャス9の解説を主体にして終わるもののほうが、求められるのではないだろうか。
そういう本は、探せばあるかもしれないし確実に出てくるだろうから、それ待ちということでもいいのではないかと思う。
それでも良ければ、という本だろう。

以下メモ
・クリスパー・キャス9はある種の細菌の免疫獲得機構を利用したシステムであり、細菌は侵入してきたウイルスのDNAをこの機構によって自分のDNA内に保存して記憶し、免疫に役立てる。
・クリスパー・キャス9は結合部がRNAによって作られており、それによって選択的にDNAと結合して特定の部位を切断する。
結合部がRNAなので非常に作りやすい。
・切断されたDNAは細胞が普通に持っている修復機構によってつながれるが、その際に欠落したり他のDNAと一緒に投与されればそれを組み込んだりすることが、ある確率で起こる。
・クリスパー・キャス9を使っても切断するだけならば放射線などを使って品種改良した場合と同等なので遺伝子組み換え作物にはならない。