仮説というよりは

『海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化』
須藤斎 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-513850-2
海洋性哺乳類の発達に関する著者の説を書いた本。
仮説自体は、どうにも、という感じだが、それに関連することがいろいろと書かれているので、それなりには楽しめるかもしれない。それで良ければ、という本か。
仮説は、漸新世に南極とオーストラリアが分かれると、南極の周囲を南極還流が覆うようになり、暖流が南極大陸まで届かなくなって、氷床が発達し、地球が寒冷化した、寒冷化した地球の海では、冷たい海底の水と温かい表層の水が入れ替わる湧昇が頻繁、不定期に起こるようになるが、珪藻、特にその中のキートケロス属は、栄養塩が少ない時期に休眠胞子を作り、湧昇によって栄養塩が補給されたときに素早く対応することで、この環境に適応し、海洋における一次生産者である植物プランクトンのうち、渦鞭毛藻や円石藻に代わって大いに繁栄した、珪藻が繁栄することで、珪藻を食べる動物プランクトンや、さらにそれを食べる生き物たちも繁栄したはずであり、さらにそれらを捕食するクジラやアザラシなどがこの時代に進化したのは、珪藻が繁栄したおかげである、というもの。
時代が合っているという以上の根拠はない上に、その時代が合っているかどうかもかなりあやふやで、個人的には、どうにもというところではあった。
現状では思い付きの域を出ていないと思う。
それでも良ければ、という本だろう。