『ヴィクトリア女王 大英帝国の"戦う女王"』

君塚直隆 著
中公新書
ISBN978-4-12-101916-5
ヴィクトリア女王の伝記。
世界に冠たる大英帝国絶頂期の君主としての外交史的な側面や政党政治家とのかかわりが、主として描かれたもので、史料批判とか考証とかいうことは殆ど記されていない物語的な伝記ではあるが、そういうもので良ければ、読んでみても良い本か。
私としては、十分に面白かったし、物事が早めに展開して割とスピード感があるので、物語的な伝記としては悪くない本だと思う。
帝国主義路線の推進者としての女王を批判的にではなく描いているので、帝国主義そのものに賛美的で、その点で若干の違和感はあるのだが。後、王室関係の人間が誰が誰だか少し分かり難いとか、記述が完全には年代順でないのでややこしくなっている部分もあるが、伝記としてはこんなものだろう。
ヴィクトリア朝時代のイギリスは有名でもヴィクトリア女王その人についてはそれ程は知られていないだろうから、基本的には、興味深く読めるのではないだろうか。
物語的な伝記で良ければ、興味があるのなら読んでみても良い本だろう。
以下メモ。
・ヴィクトリアという名は、ドイツ貴族の母の名前ヴィクトワールを英語読みにしたもので、当時としては珍しく、これは、ヴィクトリアの父に対する名付け親(父の長兄)からの意地悪だった。
・ドイツからイギリスに来たヴィクトワールやアルバート公(ヴィクトリアの母と夫)はイギリスで不信の目で見られ、ドイツに行ったヴィクトリアの娘はビスマルク等から不信の目で見られた。