『新・ローマ帝国衰亡史』

南川高志 著
岩波新書
ISBN978-4-00-431426-4
三世紀末から五世紀初頭にかけて、衰亡するローマ史を追った本。
この時代の政治史が書かれた小著といえば、そうした小著。この時代のローマ史が書かれた本が読みたければ読んでみても、という本か。
ただ、著者としてはローマ衰亡の原因をゲルマン人を敵視する偏狭な保守主義に求めたいようだが、あまり説得力はなく、現代日本を投影しすぎなのではないかと思う。
そうした偏狭な考えはローマ帝国の西側でも東側でも広がったのに、西ローマは滅びて東ローマは滅びなかったのだから、滅亡の主因とみなすことはできないだろう。
帝国の東では官僚や宦官などの皇帝側近の力が強く、在地の有力者がそこに結びついたのに、帝国の西側では有力者と皇帝権力との結びつきが弱かった、という点に、より原因は求められるのではないだろうか。本書の記述による限りは。
そうした点で、あまり成功しているとはいえないが、政治史の小著としては一つの小著ではある。
そうしたものでよければ、という本だろう。