『修羅の翼 零戦特攻隊員の真情』

角田和男 著
光人社NF文庫
ISBN978-4-7698-2585-2
著者の軍隊時代の経験を綴った戦記。
自らの軍隊生活を順に追った、おおよそ標準的な戦記だが、エピソード等も豊富にあり、戦記モノとしてはかなり面白い方の部類に入る本だと思う。戦記の好きな人に、お薦めできる。
欠点というべきかどうかは分からないが、第二次世界大戦の戦記を読んだことがなくラバウルとかガダルカナルとか聞いてもぴんとこないような人には、全体の流れが掴めず、大局的に著者が何をやっているのかよく分からない点があるかもしれない。
しかし基本的にはかなり良い本だと思うので、お薦めしたい。
戦記ものとして上位に入る理由は、航空兵志願時の話から、日中戦争、敗戦まで、相当長い期間のことが書かれていること。ソロモン諸島の戦闘や、特攻隊員としての経験は、それだけで一冊の本としての価値があるだろう。エピソードも、あまり重苦しくなく爽やか系のものが多い。この上官は温厚だったとかあの時あの人の心情に気付いてやれなかったとかいう話が多いのは、やっぱり、著者が優しい人だからなのだろうか。
生き残った特攻隊員による述懐は、この著者よりも若い世代の人のものが多く、中間管理職といっても良い古参士官による記述は珍しいと思うので、私は面白く読めた。
そういう意味でも、ある程度戦記を読んだことがある人向きなのかもしれないが、基本的にかなり良い本だと思う。
興味があるならば、お薦めしたい。
メモ1点。
・蒼龍の分隊長だった飯田房太大尉は、この戦には万に一つの勝算もない、私は生きて祖国の滅亡を見るに忍びない、といって、開戦の日にハワイで自爆したらしい(伝聞)。