『論文捏造』

村松秀 著
中公新書ラクレ
ISBN4-12-150226-4
ベル研究所のシェーンが行った論文データの捏造事件を追ったノンフィクション。
評価としては、ノンフィクション部分は、割と普通のノンフィクションで、それなりによくできていると思うが、論文捏造に対してどのように対処すべきかを提言した部分が、要するに社説レベルで殆どたいしたことはいっていないので、差し引きプラマイゼロ、という感じの本か。
良くいえば、ノンフィクション部分はまずまずなので、事件に興味があってそこのみで良いというのであれば、読んでみても、というところ。メインはそこなので、読んでみる手はあるだろう。
問題点としては、何よりも末尾を飾る(べき)社説部分の出来が悪いこと。シェーンの研究チームのリーダーだったバトログに対する中途半端な糾弾は、心情的には分かるが、糾弾すべきかどうか私にはよく分からないし、いずれにしても相当中途半端なものでしかない。また、超伝導で磁力が生じる(ピン止め効果のことか?)とか環境ホルモンが云々とか、科学的な事柄に関しては、正直疑問を感じるが、そもそも科学的な部分は殆どないので、それ程の問題ではないかもしれない。
最後が良くないので読後感が良くなく、私としては特別に良い本だとは思えなかった。メインであるノンフィクション部分はまずまずなので、そこだけで良いというのならば、読んでみても、というところだろう。