概説風なのはどうなのか

『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』佐藤岳詩 著光文社新書ISBN978-4-334-04538-8メタ倫理学に関して著者の主張を記した本。概説や問題整理を装いながら、著者の考えを強く打ち出したもので、著者の考えを知りたいのなら、という本か。学説史な…

では朝日新聞社はどうなんですか?

『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』藤田知也 著光文社新書ISBN978-4-334-04536-4いくつもの問題が相次いで発覚した日本郵政グループの不祥事に関して書かれた本。大上段にかまえて上層部や政府を批判した、朝日新聞の記者が書いた朝日新聞的な本で、それで良け…

無駄に長い気はするが

『理不尽な進化 増補新版 遺伝子と運のあいだ』吉川浩満 著ちくま文庫ISBN978-4-480-43739-6進化論を構築しようとする人間の営みについて書かれた本。個人的に主旨をまとめると、存在の本質は偶発性にある、つまり、そこにあるものはあるべくしてそこにある…

エッセイ

『カラスをだます』塚原直樹 著NHK出版新書ISBN978-4-14-088646-5カラス研究者でカラスを追い払う事業を始めた著者によるエッセイ。特別ではないがそれなりのエッセイで、そうしたもので良ければ、という本か。カラス研究者でカラスを追い払う事業をやっ…

リベットの実験から出るところはない

『未来は決まっており、自分の意志など存在しない 心理学的決定論』妹尾武治 著光文社新書ISBN978-4-334-04529-6リベットの実験(脳をモニターしていると自分が決めたよりも早く神経細胞に信号が出るというあれ)が示唆する心理学的決定論について、その周囲…

数式はないが

『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』浅田秀樹 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-522844-9三体問題についての解説本。三体問題が数学上の難しい問題であることを数学を使わずに説明したもので、それで良ければ、という本か。個人的には、微…

専門家的エッセイ

『寿命遺伝子 なぜ老いるのか 何が長寿を導くのか』森望 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-522912-5寿命に関連するいくつかの遺伝子について、その研究史などが書かれた本。それらについての紹介や総合的な解説というわけではなくて、研究史におけるエピ…

微生物雑学本

『京大式 へんな生き物の授業』神川龍馬 著朝日新書ISBN978-4-02-295111-3真核微生物に関していろいろなことが書かれた本。大体のところ、微生物雑学本と考えておけば大過ない。それで良ければ、という本か。個人的には、雑学本だからこんなもんだろという気…

上級者向け数学読み物

『なっとくする数学記号 π、e、iから偏微分まで』黒木哲徳 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-522550-9数学記号に関して書かれた数学読み物。記号に関する読み物、でだいたい想定できるようなものだとは思うが、最後はΓ関数になるので、そういうので良けれ…

紹介本

『検閲官 発見されたGHQ名簿』山本武利 著新潮新書ISBN978-4-10-610894-5GHQの下で日本人の郵便物や出版物に対する検閲作業を行っていた日本人がいたことについて紹介した本。基本的には紹介で、紹介で良ければ、という本か。政治的な話はそれほどでは…

科学者の伝記

『フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔』高橋昌一郎 著講談社現代新書ISBN978-4-06-522440-3フォン・ノイマンの伝記。別に普通の伝記ではあり、ソ連への先制攻撃を主張するような極めて冷徹な合理主義思考をテーマにしたかったのだろう、とは分かる…

取り立てては

『藤巻健史の資産運用大全』藤巻健史 著幻冬舎新書ISBN978-4-344-98612-1日銀のバランスシートが膨れていているという話と、それが引き起こすであろう破綻が発生したときの資産運用術が書かれた本。もう少し資産運用全般の話が書いてあるかと思ったが、破綻…

伝記

『ウィリアム・アダムス 家康に愛された男・三浦按針』フレデリック・クレインス 著ちくま新書ISBN978-4-480-07367-9ウィリアム・アダムスの伝記。特にどうということはないそれなりの伝記で、名前だけは知られていても実際の人物像はあまり知られていない人…

イタリア人の弁明

『誤読のイタリア』ディエゴ・マルティーナ 著光文社新書ISBN978-4-334-04520-3イタリア人の著者がイタリアの国民性などについて語ったエッセイ。イタリアの勝手な都合を弁明したものなので微妙な感じはあるが、まあ特別ではないがそれなりのエッセイ。そう…

解説本

『トポロジカル物質とは何か 最新・物質科学入門』長谷川修司 著講談社ブルーバックスISBN978-4-522267-6物性物理学のホットな話題であるトポロジカル物質の紹介と、紹介に必要な物性物理学についての入門解説を行った本。簡単ではないがその分内容は詰まっ…

雑学本

『「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか』馬場悠男 著講談社ブルーバックスISBN978-4-522231-7顔についての雑学本。雑学本以上のものはないが、雑学本で良ければ、という本か。思った以上に面白い、ということはなかったが、雑学本なので、それなりの…

狂信者の信仰告白

『兜町の風雲児 中江滋樹 最後の告白』比嘉満広 著新潮新書ISBN978-4-10-610892-1中江滋樹に取材してその半生を綴った本。中江側の主張を垂れ流しているだけなのは別に分かっていたが、そうだと分かっていてもちょっときつい狂信者の書。本当にそれで良けれ…

雰囲気

『でたらめの科学 サイコロから量子コンピューターまで』勝田敏彦 著朝日新書ISBN978-4-02-295104-5乱数についての読み物。読み物として面白くないわけではないが、解説する気はほとんどないのか、知らない人にはまったく分からないのではないか、という読み…

アンチ・ニューロン中心主義の本

『脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき』毛内拡 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-521919-5ニューロン以外の脳の働きについて書かれた本。そうしたものといえばそうしたものなので、やや癖はあるが、これで良ければ、という本か。…

天文読み物

『連星からみた宇宙 超新星からブラックホール、重力波まで』鳴沢真也 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-521354-4連星について書かれた天文読み物。特別ではないがそれなりの天文読み物で、私は天文読み物が好きなので何年に一冊はこういう本を読んでいき…

こっちも同じ

『坂本龍馬と高杉晋作 「幕末志士」の実像と虚像』一坂太郎 著朝日新書ISBN978-4-02-295099-4二人の志士を中心に描いた幕末読み物。似たような本を同じ時期に出せるくらいには、特に何もない軽い読み物。それで良ければという本か。たまたま依頼が重なったの…

読み物

『暗殺の幕末維新史 桜田門外の変から大久保利通暗殺まで』一坂太郎 著中公新書ISBN978-4-12-102617-0暗殺で綴った幕末維新史。そこまでの深いテーマや切り込みはなく、暗殺をメインに幕末維新史を綴った読み物。ただ、暗殺だけで通史になってしまうというあ…

ダークマター解説本

『見えない宇宙の正体 ダークマターの謎に迫る』鈴木洋一郎 著講談社ブルーバックスISBN978-4-06-521688-0ダークマターについて書かれた本。入門書というほど簡単ではないが、それなりに簡便な解説で、簡易解説で良ければ、という本か。ダークマターをメイン…

教養本

『ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学』川添愛 著角川新書ISBN978-4-04-082348-5機械が理解するとは何か、また人が言葉を理解するとは何かが探求された本。それを通じて人工知能が言葉を理解する可能性を探ったもの、だが、そこまでの結…

紹介エッセイ

『戦国北条家の判子行政 現代につながる統治システム』黒田基樹 著平凡社新書ISBN978-4-582-85958-4後北条氏の内政について書かれた本。全体として、日本で最初に領域国家として成り立った戦国大名の内政システムが同じ領域国家である現代日本と近しいことを…

専門家向けエッセイ

『藤原定家 『明月記』の世界』村井康彦 著岩波新書ISBN978-4-00-431851-4『明月記』の記述から藤原定家が置かれた環境や境遇を明らかにしようとした本。特に主題やテーマがあるわけでもなく、伝記でもなく、総じていえば藤原定家に関するエッセイといった本…

視野が狭い

『平安朝の事件簿 王朝びとの殺人・強盗・汚職』繁田信一 著文春新書ISBN978-4-16-661285-7検非違使別当の藤原公任が有職故実の書を著すのに使った紙背文書から、当時の検非違使が扱った地方豪族の事件を紹介した本。事件簿としての面白さはあるので、それで…

エッセイ

『アレックスと私』アイリーン・M・ペパーバーグ 著/佐柳信男 訳ハヤカワ文庫NFISBN978-4-15-050564-6ヨウムの認知能力を研究する科学者が相棒だった鳥との半生をつづったエッセイ。エッセイとしては面白い。科学書としては、まとめや解説にはすごい業績…

ナイーブ

『ヒトラーの脱走兵 裏切りか抵抗か、ドイツ最後のタブー』對馬達雄 著中公新書ISBN978-4-12-102610-1ナチスからの脱走兵が名誉回復するまでの物語。単線で勧善懲悪的で、少しナイーブすぎる気はするが、それで良ければ、という本か。そうしたもので良ければ…

私には合った

『万葉集講義 最古の歌集の素顔』上野誠 著中公新書ISBN978-4-12-102608-8万葉集についていくつかのことが書かれた本。あまり知らないことだったので、個人的には興味深かった。ややまとまりには欠ける感じだが、興味があるならば読んでみてもいい本か。人に…